VTuberとは?基本的な概念と歴史、特徴について解説!

コラム

今ではその市場規模は800億円以上とも言われているVTuber(バーチャルYouTuber)。2DCG・3DCGで描画されたキャラクター(アバター)を用いて、インターネット上で動画投稿や生放送を行う配信者のことを指し、企業に所属するVTuber/個人活動/企業・行政の公式VTuberなど、その活躍の場は広がり続けています。そこでこの記事では、VTuberの基本的な概念から、その特徴的な技術まで、VTuberを理解するための基礎的な情報を解説していきましょう。

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VTuberの定義と特徴

VTuber(バーチャルYouTuberの語源

VTuberは「Virtual YouTuber」の略称です。この言葉は、2016年12月に活動を開始したキズナアイが、自身を称する際に初めて使用された言葉でもあります。キズナアイはバーチャルYouTuber界のパイオニアとして知られており、2021年3月30日時点では、登録者が一番多いVTuberでもありました。

当初、このVTuberという言葉はキズナアイのみを指す言葉でしたが、2017年末頃からVTuberが市場にも増え、他のキャラクターも含む総称として使われるようになりました。

現在では、VTuberという言葉は幅広く使用されていますが、その定義は人によって異なる場合があります。一般的には、2DCGや3DCGで描画されたキャラクター(アバター)を用いて、主にインターネット上で動画投稿や生放送を行う配信者を指します。

VTuberの特徴①モーションキャプチャ技術の活用

VTuberの特徴の一つとして、モーションキャプチャ技術を利用していることが挙げられます。この技術により、人間の全身の動きをリアルタイムでキャラクターに反映させ、生放送やゲーム実況を行うことが可能になっています。アニメやゲームのキャラクターとは異なり、視聴者との直接的なやりとりが可能となり、その人気の要因の一つとなっています。

モーションキャプチャは、1990年代からゲーム開発等で使用されてきた技術ですが、VTuberはこの技術をリアルタイムの生放送に応用しました。例えば、2012年にウェザーニューズが発表した”WEATHEROID Type A Airi”は、モーションキャプチャを使用した生放送を行う先駆的な存在でした。

近年では、FaceRigなどのサービスの登場により、ウェブカメラを使って手軽にキャラクターを動かすことが可能になっています。これにより、VTuberになるための技術的なハードルが大幅に下がり、多くの人々がVTuber活動を始めるきっかけとなっています。

2Dモデルと3Dモデルの違い

VTuberのモデルには主に2種類あります。初期のVTuberでは全身のトラッキングを用いた3Dモデルが多く使用されていましたが、後発のキャラクターの多くはiPhoneのフェイストラッキング機能(ARKit)を用いた2Dモデルを採用しています。2Dモデルの採用により、演者の負担が軽減され、より簡易な動画制作や配信が可能になりました。

3Dモデルは、キャラクターの全身を立体的に表現できる利点がありますが、制作に時間とコストがかかります。一方、2Dモデルは比較的簡単に制作でき、スマートフォンでの配信も容易です。「にじさんじ」などのVTuberグループの多くが2Dモデルを採用しているのは、この利点によるものです。

2Dモデルを用いたVTuberは、YouTube Liveにおけるスーパーチャット(投げ銭)を主な収入源としていることから、「バーチャルライバー」と呼ばれることもあります。この呼称は、彼らの活動形態や収益モデルの特徴を端的に表しています。

VTuberの歴史と発展

VTuber文化は、わずか数年の間に爆発的な成長を遂げました。この項目では、VTuberの誕生から現在に至るまでの歴史的な流れと、市場規模の拡大について詳しく解説します。VTuberがいかにして現代のポップカルチャーの一大ジャンルへと成長したのかを理解することができるでしょう。

キズナアイと黎明期のVTuber

VTuber文化の起源は2016年12月のキズナアイの活動開始に遡ります。キズナアイは「世界初のバーチャルYouTuber」を名乗り、その斬新な表現方法で多くの注目を集めました。

2017年に入ると、VTuber文化は徐々に広がりを見せ始めます。この年に登場し、後に「バーチャルYouTuber四天王」と呼ばれるようになったのが以下の4名です:

1. 電脳少女シロ
2. ミライアカリ
3. バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん・ねこます
4. 輝夜月

これらのVTuberは、それぞれ独自の個性と魅力で多くのファンを獲得し、VTuber文化の基盤を築きました。彼らの活躍により、VTuberという新しいエンターテイメントの形が広く認知されるようになりました。

五人そろってバーチャル四天王。五人いるのになぜ四天王なのか。まあ、歴史的には問題ない。

2017年末からの急成長期

2017年末から2018年にかけて、VTuber文化は急激に拡大しました。この時期、以下のような重要な出来事がありました:

1. 「にじさんじ」や「ホロライブ」などの大手VTuber事務所の誕生
2. upd8(アップデート)やENTUMなどのVTuberサポートプロジェクトの発足
3. 多くの企業がVTuber事業に参入
4. MikuMikuDanceやLive2Dの技術者たちのVTuber業界への参入

これらの要因により、2018年の一年間でVTuberの人口は約10倍に拡大したとされています。また、この時期にはVTuberの制作技術も大きく進歩し、より高品質で多様なVTuberが登場するようになりました。

現在のVTuber市場規模

矢野経済研究所の調査によると、2023年度のVTuber市場規模は前年度比153.8%の800億円に達しました。これは「同人誌」の800億円や「トレーディングカードゲーム」の792億円と比肩する規模であり、VTuberがコンテンツ産業において重要な位置を占めるようになったことを示しています。

市場の内訳を見ると、以下のようになっています:

1. グッズ:267億円(構成比51.3%)
2. ライブストリーミング:135億円(同26.0%)
3. BtoB:78億円(同15.0%)
4. イベント:40億円(同7.7%)

特筆すべきは、グッズ領域が最も大きな成長を遂げていることです。これは、VTuberのファンが積極的にグッズを購入し、推しのVTuberを支援する傾向が強まっていることを示しています。

また、Webtoon(縦スクロール式のカラーマンガ)作品によるものが全体の約1割を占めているとみられ、VTuber市場の多様化が進んでいることがわかります。

2023年度には、VTuber市場は800億円規模まで成長すると予測されており、今後もさらなる拡大が期待されています。

VTuberの活動内容

VTuberの魅力は、その多様な活動内容にあります。この項目では、VTuberが行う様々なコンテンツ制作から、音楽活動、ファンとの交流まで、VTuberの活動の幅広さと奥深さを探ります。これらの活動がどのようにVTuberの人気を支え、独自の文化を形成しているかを理解することができるでしょう。

多様なコンテンツ制作

VTuberの活動は多岐にわたります。主な活動内容には以下のようなものがあります:

1. 実験や検証:科学実験や社会現象の検証など
2. 対談:他のVTuberや著名人とのコラボレーション
3. 知識の伝達:特定のテーマに関する解説や講座
4. ファンとのコミュニケーション:生放送でのチャット交流
5. ゲーム実況:人気ゲームのプレイ動画
6. 歌唱:カバー曲やオリジナル曲の歌唱
7. ダンス:オリジナル振付やダンスカバー

これらの活動の中で特に重要なのが、リアルタイムでの視聴者とのやりとりです。従来のアニメやゲームキャラクターとは異なり、VTuberは生放送中にファンのコメントに即座に反応し、対話することができます。この双方向性が、VTuberの大きな魅力の一つとなっています。

また、VTuberの中には特定の分野に特化した活動を行う者もいます。例えば、料理、プログラミング、語学学習など、専門性の高いコンテンツを提供するVTuberも増えています。これにより、視聴者は楽しみながら新しい知識や技能を学ぶことができます。

音楽活動とVRライブ

VTuberと音楽の親和性は非常に高く、多くのVTuberが音楽活動を行っています。主な活動には以下のようなものがあります:

1. オリジナル曲の制作と発表
2. カバー曲の歌唱
3. VRライブの開催
4. 音楽レーベルとのコラボレーション
5. CDやデジタル音源のリリース

特に注目すべきは、VRライブの開催です。VTuberはバーチャル空間でライブを行い、視聴者はVR機器を使ってそのライブに参加することができます。これにより、物理的な制約を超えた新しいライブ体験が可能になっています。

また、VTuberの音楽活動は従来のメディアにも認められつつあります。2019年1月には、NHK総合で『NHKバーチャルのど自慢』という特別番組が放送されました。この番組では、多くのVTuberが歌唱力を競い合い、VTuberの音楽活動の質の高さを広く示すことになりました。

ファンとの交流とコミュニティ形成

VTuberの魅力の一つは、ファンとの直接的な交流にあります。VTuberは以下のような方法でファンとの交流を深めています:

1. 生放送中のコメントへの返答
2. ファンアートの紹介と感想
3. ファンからの質問に答える「質問コーナー」の実施
4. Twitter等のSNSでの日常的な投稿
5. ファン参加型のイベントの開催

これらの交流を通じて、VTuberとファンの間には強い絆が形成されます。また、ファン同士のコミュニティも生まれ、そこでさらに交流が深まっていきます。

特筆すべきは、ファンによる二次創作活動の活発さです。多くのファンがVTuberのファンアートを描いたり、MAD動画を制作したりしています。VTuberの多くはこれらの二次創作を歓迎し、時には生放送で紹介することもあります。このような相互作用が、VTuber文化の豊かさと多様性を生み出しています。

また、VTuberのファンコミュニティは、しばしば社会貢献活動も行います。例えば、VTuberの誕生日や記念日に合わせて募金活動を行ったり、環境保護活動に参加したりすることがあります。これらの活動は、VTuber文化の社会的な意義を高めることにもつながっています。

VTuberの社会的影響

VTuberは単なるエンターテイメントの一形態を超えて、現代社会に大きな影響を与えています。この項目では、VTuberが若年層を中心に高い認知度を獲得していること、企業や自治体による活用が進んでいること、そしてアイデンティティや表現の自由に関する新たな可能性を提示していることについて詳しく解説します。VTuberが私たちの社会や文化にもたらしている変化を、多角的に理解することができるでしょう。

若年層における高い認知度

2019年の調査報告によると、VTuberの認知度は10代で67%、20代で50%となっています。約7割の10代がVTuberを認知している事となり、若年層におけるVTuberの影響力の大きさを示しています。さらに、VTuberの社会的な注目度の高さを示す事例として以下のものがあります。

1. 「バーチャルYouTuber / VTuber」が2018年のネット流行語大賞で金賞を受賞
2. 「VTuber」が#Twitterトレンド大賞ピックアップアワードに選出
3. 「バーチャルユーチューバー」がSMBCの2018年ヒット商品番付に選出
4. 「Vチューバー」が日経MJの2018年ヒット商品番付のに選出

これらの事例は、VTuberが単なるサブカルチャーの一つではなく、主流の文化として認知されつつあることを示しています。

また、YouTubeの公式発表によると、2020年12月時点でVTuberの月間視聴回数が15億回を超えており、ユーザーの47%がキャラクターまたはバーチャルのクリエイターが作成したコンテンツを視聴することに積極的であるという調査結果も出ています。これらの数字は、VTuberがグローバルな規模で影響力を持っていることを示しています。

企業や自治体による活用事例

VTuberの人気に伴い、企業や自治体もVTuberを活用するようになっています。以下に代表的な事例を紹介します。

1. 企業によるVTuber活用
– ロート製薬:公式VTuber「根羽清ココロ」を起用
– サンリオ、花王:日本国内でVTuberを活用したマーケティング展開
– グリー:2018年にVTuber事業に100億円規模の投資を発表

2. 自治体によるVTuber活用
– 茨城県:「茨ひより」を公認VTuberとして活動(2018年8月、初の地方自治体公認VTuber)
– FC岐阜(J2リーグ):VTuber「蹴球夢」デビュー(2019年6月)

3. メディア企業によるVTuber活用
– チューリップテレビ(富山県の民放局):VTuber「奥田ふたば」デビュー(2020年)

4. 子供向けVTuberの展開
– クマーバ(アカツキ→Kumarba)
– DJマロンとMCズイミー(バンダイ)
– わたこ(アイフリークモバイル)

これらの事例は、VTuberが単なるエンターテイメントの枠を超えて、ビジネスや行政、教育など様々な分野で活用されていることを示しています。企業や自治体がVTuberを活用する理由としては、若年層へのアプローチ、新しい形のコミュニケーション手段の確立、地域や企業のPRなどが挙げられます。

アイデンティティと表現の自由

VTuberの特徴として、「なりたい自分になれる」「制約を乗り越えることができる」点が挙げられます。これは、現実の性別や外見にとらわれない活動が可能であることを意味し、多様な表現の場となっています。

1. ジェンダーとアイデンティティ
– 現実の性別(セックスやジェンダー)に関わらず、好きなキャラクターとして活動できる
– 「バ美肉(バーチャル美少女受肉)おじさん」:成年男性の演者が美少女のアバターを用いるケース

2. 身体的制約からの解放
– 身体的な障害や制限に関わらず、自由に動けるキャラクターとして活動できる
– 稲見昌彦教授は、VTuberを「性別や障害といったハンディキャップを乗り越えて、誰もが活躍できる」デジタルサイボーグと評している

3. 新たな自己表現の形
– 落合陽一氏は、VTuberを「コンピュータ時代または21世紀に登場した自然人らしい存在」と評している
– 従来のSNSやブログとは異なる、新たな自己表現・自己実現の手段として機能している

4. プライバシーの保護
– 実際の容姿を公開せずに活動できるため、プライバシーを守りながら表現活動が可能

これらの特徴により、VTuberは従来のメディアでは表現しきれなかった多様性を内包し、新たな文化や価値観を生み出す可能性を秘めています。また、このような特徴は、インターネット時代における新たなアイデンティティのあり方や、表現の自由に関する議論にも大きな影響を与えています。

まとめ

VTuberの存在は、私たちに「自己」や「アイデンティティ」、「表現」について再考する機会を提供しており、デジタル社会における人間のあり方に関する重要な示唆を与えているといえます。最近では、ロサンゼルス・ドジャース/Net Ease GamesとのVTuberコラボなどその影響は海外にまで及び、エンタメ業界という一言では括れないほどのビッグコンテンツになりました。今後もその動向に注目が集まります。

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