日本テレビは21日に行われた取締役会において、『もののけ姫』『となりのトトロ』などで知られるスタジオジブリの子会社化を決定した。スタジオジブリ側も同日の取締役会で日本テレビへの株式譲渡の了承を決議し、都内の会議室で緊急会見を開いて発表。日本テレビプレスリリース及び、スタジオジブリのプレスリリースにおいても明らかにした。
会議室の緊急会見は、ORICON NEWS、ナタリー、日本経済新聞など各社が発表しており、会見には日本テレビ代表取締役会長執行役員の杉山美邦氏、スタジオジブリ代表取締役社長の鈴木敏夫氏らが出席した。
ちなみにご存じの方もいるかもしれないが、日本テレビとスタジオジブリはこれまでにも密なやり取りを行ってきた。日本テレビが1985年の『風の谷のナウシカ』(1984年、宮﨑駿監督）をテレビ初放送して以来、毎週金曜21時に放送される「金曜ロードショー」を通じてスタジオジブリ作品を放送し続け、1989年に公開された『魔女の宅急便』(1989年、宮﨑駿監督）からは映画製作にも出資。1985年から2023年の間に同枠でスタジオジブリ作品が放映された回数は200回を超えると言われており、宮崎駿が発案し2001年に開館した「三鷹の森ジブリ美術館」への出資も続けるなど、良好な信頼関係を築いてきた。
スタジオジブリによれば、今回の子会社化に至ったのは「後継者問題の解決」がポイントだったという。現在スタジオジブリ代表の宮﨑駿 氏は82才、プロデューサーの鈴木敏夫 氏も75才となり、スタジオジブリでは今後の経営を誰かに任せられないかと、その候補を巡って検討を重ねていた。宮崎駿氏の長男・宮崎吾朗 氏の名前も候補に挙がったが、「一人でジブリを背負うことは難しい、会社の将来については他に任せた方が良い」という吾郎氏の考えもあり、なかなか決定には至らなかった。そんななか、今まで協力関係にあった日本テレビとの話し合いが始まったのである。
昨年某月、スタジオジブリの鈴木氏と日本テレビの杉山氏が温泉場で話を交わした際、鈴木氏から「ジブリがこれからも映画づくりに集中するために、経営を日本テレビで手伝ってもらえないか」と申し入れた。これに対し日本テレビの杉山が、「今後ともジブリ作品を応援し、ジブリが映画を作り続けられる環境を守ることになるならば」と、これを前向きに検討することを約束したのが今回の決定に至るきっかけだったという。
なお現在は日本テレビがスタジオジブリの株式の取得を進めており、議決権所有割合42.3％の筆頭株主となり、日本テレビから役員が派遣され、スタジオジブリの自主性をしっかり尊重したうえでスタジオジブリの経営をサポートしていく事を表明。ジブリ美術館、ジブリパークの運営にも専念していくという。
経営は日本テレビ、モノ作りはスタジオジブリと言う強固な座組が出来上がった形になるが、スタジオジブリ所属のクリエイターの待遇が今以上に改善し、安心して作品づくりに専念できる良い循環が生まれることに期待したい。
■参照元
日本テレビプレスリリース（PDF）：https://www.ntv.co.jp/info/pressrelease/
スタジオジブリ公式サイト：https://www.ghibli.jp/info/013778/
個人見解：子会社化によるジブリ作品への影響は？
“合併”“子会社化”という言葉が出てくると、ドラマで描かれる様子や他社の事例から「既存の良い体制に口出しが入るのでは？」というネガティブなイメージがあるかもしれない。だが上記の説明の通り、これまでスタジオジブリと日本テレビは良好な関係を築いてきた歴史があり、スタジオジブリが持つ『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』といった大型IP（知的財産権）の活用をダイナミックに行うことが期待できる。
これまでは映画作品が主流だったスタジオジブリ作品を連載型のアニメーションに進化させることができるかもしれないし、ドラマ化や舞台化等が実現すれば、その影響力はさらに広がりを見せる。また日本テレビは2011年、『サマーウォーズ』、『カードキャプターさくら』などで知られるアニメ制作会社・マッドハウスを子会社化し、「ハクション大魔王」「科学忍者隊ガッチャマン」等のオリジナルアニメ制作に定評のあるタツノコプロを2014年に子会社化している。テレビ局としてアニメプロデュースを行ってきた実績があり、2023年9月末には、マッドハウスが制作した『葬送のフリーレン』が金曜ロードショーで放送される。
日本のエンタメ業界発展における大きな一歩に、今後もますます目が離せない。そして日テレさん。Huluやネットフリックスでもジブリを配信できるようにしてくれたらうれしいです……（切実）
