時代劇の殺陣がヒントに! 3Dの戦闘を遊びやすくした「Z注目」
「Z注目」とは、Zボタンで敵をロックオンし、リンクがその相手に向き合ったまま動ける仕組みだ。敵を中心に回り込めるだけでなく、盾を構えながら移動したり、横っ飛びやバック宙で攻撃をかわしたりできる。
この仕組みが求められた背景には、3Dならではの操作の難しさがあった。開発に携わった小泉歓晃さんによると、『スーパーマリオ64』の制作時から、目の前の敵とうまく向きが合わず、攻撃を当てにくいことが課題になっていたという。立体的な世界で自由に動けるようになった一方、相手の方向を正確に向くことまで、プレイヤーが意識しなければならなくなったのだ。
Z注目は、そうした向きの調整や、敵を画面内に捉え続ける負担を軽減した。相手の動きを見ながら、攻めるか、守るか、距離を取るかを判断しやすくなったのである。
ただ、敵を捉えられるようになれば、戦闘の問題がすべて解決するわけではない。複数の敵が一斉に襲いかかれば、混乱した戦いになってしまう。そこでヒントになったのが、開発の参考に訪れた東映太秦映画村での体験だった。
小泉さんが注目したのは、時代劇の戦闘演技である「殺陣」。大勢の敵に囲まれていても、実際には1人ずつ順番に斬りかかり、それ以外の敵役は待っている。この段取りを参考に、Z注目している敵以外を待機させる仕組みを取り入れたという。2体のスタルフォスとの戦闘は、その具体例だ。
単に攻撃の照準を合わせるのではなく、カメラ、移動、敵の行動まで組み合わせ、剣と盾を使った駆け引きを成立させた。Z注目の革新性は、3Dで戦うことの煩わしさを減らし、相手の動きに対応する楽しさを味わいやすくした点にあるといえる。
『マリオ』の制作陣も驚いた、ジャンプボタンをなくす「オートジャンプ」
「オートジャンプ」は、段差や離れた足場に向かって走ると、状況に応じてリンクが自動的に跳ぶ仕組みだ。進む方向はプレイヤーが決めるが、跳び出す瞬間にボタンを押す必要はない。
アクションゲームではおなじみのジャンプ操作を、あえて省いたわけだが、最初からこの形だったわけではない。開発初期の『時のオカリナ』には、ジャンプボタンが存在していた。
方針を考えるうえで重要だったのが、やはり『スーパーマリオ64』での経験だ。小泉さんたちは、3D化によってアクションの難しさが増したと感じていた。そのため『ゼルダ』では、アクションの難しさを抑え、謎解きの比重を高めようと考えていたという。
そんななか、宮本茂さんが休日に思いついたのが、オートジャンプだった。アイデアを早くスタッフに伝えたくて、月曜日に会社へ行くのが待ち遠しかったという。そして月曜の朝、みんなを集めて「オートジャンプというのをやるぞ」と宣言すると、スタッフからは驚きの反応が返ってきた。『マリオ』を作ったチームが、ジャンプボタンをなくそうというのだから、無理もない。
しかも、この変更には操作の簡略化だけではない効果があった。ゲーム側が地形を読み取り、状況に合った跳び方を選べるようになったのだ。高い場所から水へ飛び込む際に、リンクが頭から飛び込む姿勢を取るのも、その成果だった。
ジャンプそのものをなくしたのではなく、跳ぶタイミングの判断を一部ゲームに任せた。プレイヤーは細かなボタン操作よりも、進む先や仕掛けの解き方を考えやすくなる。多くの行動を可能にしながら、操作をむやみに増やさないという点で、オートジャンプも本作を象徴する工夫だった。
通路のねじれまで攻略に利用! 空間そのものを考える「立体的な謎解き」
「立体的な謎解き」とは、高さや奥行き、部屋の向きなど、立体空間の構造を利用した仕掛けのことだ。『時のオカリナ』では、ダンジョンの見た目だけでなく、謎を解くための考え方にも3Dの特徴が取り入れられた。
代表例が、森の神殿にある「ねじれた通路」だ。通路をまっすぐにすることで、それまで取れなかったアイテムが取れるようになる。不思議な形の廊下を見せるだけではなく、その状態を変えることが攻略につながっているのである。
ダンジョンを担当した青沼英二さんが、最初に設計したのも森の神殿だった。発売当時の『ほぼ日刊イトイ新聞』のインタビューでは、以前から考えていた大がかりな仕掛けを、ここで形にしていったと語っている。
もっとも、アイデアがあれば簡単に作れたわけではない。青沼さんは、担当デザイナーが、通路のねじれた状態をどう作ればよいか、1週間ほど悩んでいたと振り返っている。自ら絵を描いてねじれ方を説明し、形にしていったという。3Dならではの仕掛けを目指したからこそ、制作する側にも、これまでとは違う難しさがあったのだ。
また、複雑な仕掛けを用意するだけでなく、プレイヤーが段階的に理解できるようにも考えられていた。青沼さんによると、序盤はひとつの部屋のなかで解く仕掛けを中心にし、中盤ではダンジョン全体を行き来しながら解く構成にしたという。終盤は、そこまでに学んだことを応用する内容になっていた。
道順を覚えるだけでなく、空間の状態が変わると何ができるのかを考える。立体的な世界になったことを、見た目の変化だけで終わらせず、謎解きの面白さへと結びつけた点も、本作の重要な新しさだった。
Z注目とオートジャンプで操作の負担を減らし、その一方で、立体空間を理解する謎解きは充実させる。こうして振り返ると、『時のオカリナ』は、プレイヤーに何を操作させ、何を考えてもらうかを、細かく検討した作品だったことがわかる。
11月5日発売予定のリメイク版では、注目システムを受け継ぎつつ、カメラを自由に回す操作や、任意のタイミングでのジャンプなども取り入れられる。原作で採用された工夫と、新たに加わる操作。その違いを確かめながらハイラルを冒険することも、今回のリメイクを楽しむポイントになりそうだ。
※引用サイト
・任天堂公式HPより
https://www.nintendo.co.jp/3ds/interview/aqej/vol5/index5.html
https://www.nintendo.co.jp/3ds/interview/aqej/vol2/index2.html
・ほぼ日刊イトイ新聞
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