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コラム

2025.08.22

花譜 × Mori Calliope『光』、9月3日配信&MV公開!組曲2第七弾は日米VTuberカルチャーの交差点となる

VTuber ホロライブ
花譜 × Mori Calliope『光』、9月3日配信&MV公開!組曲2第七弾は日米VTuberカルチャーの交差点となる
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9月3日、バーチャルシンガーソングライターの花譜と、ホロライブプロダクションに所属するMori Calliopeによるコラボ楽曲「光」が配信される。同日20時にはYouTubeでミュージックビデオがプレミア公開される予定だ。発表からこのニュース自体は多くのメディアが伝えているが、この記事では単なるリリース紹介にとどまらず、このコラボが持つ文化的な意味、そして音楽シーンにおける位置づけを深掘りしていきたい。

両者が歩んできたキャリアを重ね合わせるとき、見えてくるのは「日米VTuberカルチャーの交差点」という構図だ。ここでは、事実を丁寧に整理しながら、なぜこのコラボが今実現したのか、その背後にある必然性を探っていこう。

大阪・関西万博「ARK或ル世界」での初披露から正式リリースへ

まず事実を確認しよう。楽曲のタイトルは「光」。花譜が展開するコラボシリーズ「組曲2」の第七弾として位置付けられている。作詞はたなか(Dios)、作曲は椎乃味醂とたなか、編曲は椎乃味醂が手がける。6月には大阪・関西万博の「バーチャル大阪ヘルスケアパビリオン」で先行披露されており、万博という公共性の高い場を経て、いよいよ正式リリースに至る流れだ。リリースは9月3日(水)、そして20時にYouTubeでMVがプレミア公開される。20時という時間設定は、日本のゴールデンタイムに当たると同時に、欧州では正午前後、北米では朝の時間帯となり、日米欧のファンがほぼ同時に体験できる設計になっている。

花譜とMori Calliope――日米を代表するVTuberアーティスト

花譜は2018年にデビューした日本のバーチャルシンガーであり、KAMITSUBAKI STUDIOに所属している。2019年から始まった「不可解」シリーズのライブで注目を集め、2022年には日本武道館、2024年には代々木第一体育館でワンマン公演を成功させた。特に代々木第一体育館での公演は「ソロのバーチャルシンガーとして史上初の単独アリーナ公演」として記録され、バーチャルアーティストの可能性を拡張する出来事であった。

一方のMori Calliopeは、カバー株式会社が展開するホロライブEnglishに所属する英語圏VTuberである。彼女は“死神の見習い”というキャラクター設定を持ち、ラップを武器にした独自のスタイルで人気を築いてきた。ユニバーサルミュージックジャパンからアルバム「SINDERELLA」をリリースし、メジャーアーティストとしての地位も確立している。さらに2025年2月にはロサンゼルスのHollywood Palladiumでソロ公演「Grimoire」を行い、現地の観客を動員して北米のシーンに確固たる足跡を残した。日本のアリーナを制した花譜と、北米のライブハウスを制したMori Calliope。この二人が同じ曲を歌うこと自体が、すでに象徴的な出来事なのである。

共鳴するテーマ――“死”と“再生”、そして“光”

両者の音楽的なテーマ性も興味深い。Mori Calliopeは死神というキャラクター設定からも明らかなように、「死」や「境界」をラップで描いてきたアーティストである。死を忌避するのではなく、日常の延長線上にあるものとして扱い、その境界を越えようとする強い意志を示してきた。

花譜はこれまでの作品群で「生と死」「光と闇」を扱い、バーチャルという存在そのものを「変化と再生」の象徴として位置付けてきた。バーチャルであるがゆえに変化し続けられる存在、それを音楽に乗せて発信してきたのである。今回のコラボ曲が「光」と題されていることを考えると、「死を抱えた存在」と「再生を歌う存在」が交わることで、象徴的に“光”が生まれるという構図を見出すことができる。これは単なる偶然ではなく、両者のアーティスト性が必然的に引き寄せ合った結果だと捉えるべきだろう。

音楽シーンにおける“ボーダーレス化”の象徴

今回のコラボは、音楽シーン全体における「境界の消失」を象徴している。花譜の「組曲2」は、国内外の多様なアーティストとコラボを重ねてきた。第5弾ではフランス出身のMoe Shopとタッグを組み、エレクトロニック・ミュージックの新しい可能性を提示した。第6弾ではCHiCOと共演し、ポップスとバーチャルの接点を広げた。そして第7弾としてMori Calliopeを迎え入れることで、今度は日米のカルチャーをまたぐ橋を架けたことになる。

Mori Calliopeはユニバーサルミュージックというメジャーレーベルと契約し、世界展開を前提に活動をしている。花譜はKAMITSUBAKIというネット発のスタジオを拠点にしながら、アリーナクラスの会場でリアルな観客を集める存在となった。インディとメジャー、ネット発とリアルステージ、J-POPと洋楽、こうした従来の境界を軽々と飛び越えたコラボレーションは、今の音楽産業が進む方向性を象徴している。

発表形式に見る戦略――9月3日配信+20時プレミア

配信日とMVプレミア公開を同日に設定した点も興味深い。配信で音源を聴いたファンが、そのまま20時にYouTubeのプレミア公開に集まる。この「回遊性の確保」は、SNS時代の音楽マーケティングにおいて非常に効果的である。20時という時間は、日本ではゴールデンタイムであり、欧州では昼休み、北米では朝の出勤・通学前の時間帯である。国際的なファンダムを同時に動員するために最適化されたスケジュールと言える。

さらに、この曲が最初に披露されたのは大阪・関西万博の「ARK或ル世界」であった。公共性のある国際イベントで初公開し、その後に商用リリースへとつなげる流れは、「公共から商用へ」という戦略的な導線を持つ。これは単なるリリースではなく、イベントと配信を有機的に接続する新しい試みとして捉えるべきである。

日本と英語圏、異なるファンカルチャーの熱狂が交差する

花譜とMori Calliope、それぞれのファンダムの性質にも違いがある。花譜のファンは日本国内を中心に、アリーナ規模の会場でバーチャルシンガーを支える力を示してきた。ステージ上の存在がバーチャルであっても、観客が実際に会場に集まり、ペンライトを振り、歌声に応える光景は、日本的なライブ文化の継承でもある。

一方でMori Calliopeのファンは、英語圏のVTuberコミュニティを基盤としながら、現地のライブハウスで熱狂を形にしてきた。2025年2月に行われたロサンゼルス・Hollywood Palladiumでのソロ公演は、その象徴的な例である。現地レポートでは、10代から20代前半の観客が多く集まり、コスプレやグッズを通してVTuber文化を体現していたことが報じられている。日本と英語圏、それぞれの熱狂が今回のコラボを通じて同一のタイムライン上で交差するのは、ファンダム史的にも貴重な瞬間だ。

組曲2の流れの中で――連続性がもたらす意味

「光」はシリーズ作品「組曲2」の第七弾である。このシリーズは、花譜が外部アーティストとコラボすることで新しい音楽的可能性を提示してきた連作だ。Moe Shopとの「My Life」、CHiCOとの「撃って」、星街すいせいとの「一世風靡」など、すでに多彩な組み合わせを実現してきた。つまり「光」は突発的に生まれた企画ではなく、連続する試みの延長線上にある。日米を跨ぐ今回のコラボは、その到達点として位置付けられる。

まとめ――単なる1曲を超えて

花譜とMori Calliopeの「光」は、単なるコラボ楽曲にとどまらない意味を持つ。日本と北米で大型単独公演を実現した二人が、万博という公共性のある舞台で初披露し、国際的に同時視聴可能な時間にリリースする。この設計には、日米のVTuberカルチャーを交差させ、ファンを一つの場に集める意図がある。さらに、両者のテーマ性である「死」と「再生」が「光」というタイトルで結びつくことにより、象徴的な共鳴が生まれている。

音楽シーン全体を見渡せば、J-POPと洋楽、インディとメジャー、バーチャルとリアルといった境界が薄れつつある。その象徴として「光」を捉えることで、このニュースは単なる告知を超え、現代音楽の動向を読み解く鍵となる。VTuber音楽の未来を考える上で、このコラボは見逃せない一歩である。

■花譜 アーティストプロフィール

「KAMITSUBAKI STUDIO」始まりのバーチャルシンガー。

2018年、当時14歳にしてデビュー。

唯一無二の歌声と世界観を持つバーチャルアーティスト像を確立する。

「組曲」シリーズでのアーティスト・コラボレーションも話題となり、現在YouTube登録者数は100万人、総再生回数は3億回を突破。国内外に熱狂的なファンコミュニティが拡大中。

活動初期からのメインコンポーザー・カンザキイオリと生み出した楽曲は高い評価を受け、2022年8月、日本武道館でのワンマンライブ「不可解参(狂)」を開催。

2024年1月、代々木第一体育館で第2章の幕開けともいえる 4th ONE-MAN LIVE「怪歌」を開催、武道館に続きバーチャルシンガー単独公演として最大規模を更新する初のアリーナ公演を成功させた。

2025年は海外でも精力的にライブ活動を展開。未踏の世界へと突き進んでいくこの「ジュブナイルの続き」を目撃せよ。

Official Website:https://kaf.kamitsubaki.jp/

■Mori Calliope アーティストプロフィール

グリム・リーパーの第一弟子。医療が発達している現代においては、死神として活躍する場面がなく、その代わりにVTuber活動で他人のソウルを収穫するつもりらしい。尊死している人のソウルも彼女の元へ行く模様。

結局のところ、発言内容や声のイメージと違って、彼女は実は面倒見がよく、優しい心の持ち主である。

Official Website:https://hololive.hololivepro.com/talents/mori-calliope/

■引用元
KAMITSUBAKI STUDIO:https://kamitsubaki.jp/news/2025/08/19/8259/
PRTIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000408.000106737.html

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